
こんにちは、副院長の金子です。
ご家族からイビキを指摘された、日中に強い眠気を感じる、寝苦しい、疲れが取れない、など感じたことはありますか?今回は睡眠時無呼吸症候群についてお話しします。
1)睡眠障害、睡眠時無呼吸症候群(SAS)
近年では、睡眠に対する書籍も多く発刊され、睡眠負債というワードが流行るなど、睡眠障害は現代人にとって無視できない問題となっています。睡眠不足が引き起こすトラブルは、日中の仕事能率・行動力の低下だけではなく、糖尿病や心筋梗塞をはじめとする様々な全身疾患の引き金になるとされています。
睡眠障害の原因は、心血管系・呼吸器系の疾患、ホルモンバランス、生活習慣(アルコール摂取など)を含め、およそ130以上の項目が挙げられます。
中でも特に注目されているのが、今回お話する睡眠時無呼吸症候群です。文字通り就寝中に呼吸が止まってしまう症状が現れるものです。睡眠時無呼吸症候群の定義は「無呼吸が1時間に5回以上、もしくは一晩に30回以上」とされています。(10秒以上の気流停止を無呼吸とします)
2)睡眠時無呼吸症候群(SAS)が及ぼす問題
睡眠時無呼吸症候群というと、2003年に岡山で起きた山陽新幹線運転手の居眠りが話題となりました。運転手はその後睡眠時無呼吸症候群と診断されました。それからも大型トレーラー、遊猟船、高速バスの居眠り運転による死亡事故が多発し、いずれの運転手も睡眠時無呼吸症候群と診断されました。SAS患者では、非SAS患者と比べて「運転中の眠気」の経験割合が4倍、「居眠り運転」の経験割合が5倍(*1)とデータが出ているように、SASは大きな社会問題となっています。
これら日中の眠気以外にも、SASが及ぼす悪影響は他にもあります。SASによる酸素不足は、心臓血管系、消化器系の疾患のリスクを高めてしまいます。心不全、脳梗塞、高血糖、高血圧、逆流性食道炎などが挙げられています。
3)睡眠時無呼吸症候群の検査
a) 簡易検査
機器をレンタルして自宅で測り、SASの可能性を探る
b) 終夜PSG検査
専門の検査機関のベッドで機器を装着し呼吸の状態を記録します。装着する機器の数も検査項目の数も簡易検査より多くなり、より細かい呼吸の状態が測定できます。重症度の判定や治療方針の決定はこの検査で行います。
流れとしては、簡易検査で1時間あたりの無呼吸状態が20以上であれば終夜PSG検査に移行していきます。
4)睡眠時無呼吸症候群の治療検査によりSASと診断されると、以下の器具を就寝時に装着することで治療を行っていきます。
a)マウスピース
舌根で気道が閉塞されないような顎の位置に誘導します。歯科が関わるのはこの治療です。
b)CPAP(シーパップ)
人工呼吸器のような装置により、空気を強く送ることで酸素供給を確保します。
5)終わりに
いびき、日中の眠気に悩まされている方は一度検査に行くことをお勧めします。また睡眠時無呼吸症候群は様々ある睡眠障害のうちのひとつでしかないので、人によっては睡眠障害の改善が見られない場合もあります。しかし、その中でも体質改善等に比べ取り組みやすい治療であることも言えるので、お困りの方は相談からでも是非受診されてみてください。
*1)臨床精神医学1998;27:137-147