~歯周病患者さんへの歯ブラシ選択のポイント~

歯周病の患者さんにおいては, とりわけ歯頸部のプラーク除去が重要であり,ブラッシングテクニックが習得できていれば,コンパクトな歯ブラシのほうが歯頸部をねらったブラッシングが行いやすいと考えられます.特に, 3列植毛程度の,幅が狭い歯ブラシのほうが歯間乳頭部への到達性が向上します

しかしながら,ブラッシングスキルの習得が難しい患者さんでは,歯ブラシの幅が狭いと,歯頸部に当たりにくくなるだけでなく,ブラッシングストロークも不安定になりがちです.そのため, このような患者さんには 幅の広い歯ブラシを処方することで,歯頸部をねらったブラッシングをしなくても,歯頸部に毛先が当たりやすくなります.

また,毛先が極細に加工された歯ブラシは,歯間乳頭部や歯周ポケットなどの細部への到達性が向上しますが,極細毛先は清掃効率が低下するので, じっくりと時間をかけたブラッシングが必要になり,患者さんのブラッシング時間やスキルを考慮して選択する必要があります

~矯正歯科治療中の患者さんへの歯ブラシ選択のポイント~

マルチブラケット装着時には,基本的には凸型ヘッドまたは凹型ヘッドの矯正歯科治療用歯ブラシを用いてマルチブラケットの切端部側と歯頸部側の二方向から当て,マルチブラケット周囲にプラークが残らないように磨いてもらいます.歯間部は歯ブラシのつま先を用いるか,シングルタフトブラシを使用します. これらの方法を指導しても,マルチプラケットと歯頸部の間やワイヤーの内側に磨き残しが認められる場合には,本症例のように,極細毛かつタフトの径が細くなっている歯ブラシを用いるのも方法の1つです.

~混合歯列期の患者さんへの歯ブラシ選択のポイント~

混合歯列期におけるブラッシング指導では,特に齲蝕予防に考慮した指導が必要です.小学校低学年には,子ども用で,植毛部に細部到達性を高めるための構造があり,柄がある程度太く, しっかりと握ることができる歯ブラシがよいでしょう . また,小学校高学年であっても,歯面や歯列に合わせたブラッシングテクニックの習得が難しいことが多いため,プラツシングテクニックを補う構造をもった歯ブラシが推奨されます. また,齲蝕予防に重点を置いた成人用の歯ブラシの,小さいサイズのものを使用することもできます.歯面に合わせた歯ブラシの角度づけをしたていねいなブラッシングができるようであれば, コンパクトで,植毛部のつま先が使いやすい構造になっているもの, また,歯間部への歯ブラシの適切な角度づけができない場合には,歯間部到達性に重点を置いた歯ブラシが推奨されます.

~インプラント部への歯ブラシ選択~

インプラント部だけ異なる歯ブラシで磨くことは受け入れてもらうことが難しく,インプラント部と天然歯を同一の歯ブラシで磨けるよう,般的にはコンパクトな3列植毛の歯ブラシを選択し,細部は歯間ブラシやシングルタフトブラシで磨いてもらいます.そのうえで,上部構造の形態が磨きにくい方やブラッシング技術の習得が困難な方には毛丈が長く細部まで到達しやすい極細毛でタフト(毛束)の径が小さい歯ブラシを処方しています.小径タフトを用いた歯ブラシにはデンターシステマハグキプラス(ライオン)などもあります.ただし,極細毛は清掃効率が低下し時間をかけたブラッシングが必要となるので,患者さんのブラッシング時間を考慮して選択する必要があります.

デンタルハイジーンより参照 山下