近年、小児の顎の大きさと歯の幅径のバランスが崩れている状態が多く見られます。
「歯が大きくなったと」という報告もありますが、軟らかいものが中心の食生活や口呼吸の子どもを見る機会が多いことから、顎の発育にも何らかの原因があると考えられます。顎が小さく、永久歯の萌出スペースが不足した口腔内では歯の交換がスムーズに進まない可能性があります。ほかにも、過剰歯、歯牙腫、外傷など理由はさまざまですが、永久歯が適切な時期に適切な位置で成長したり萌出したりできないケースも多くあります。その異常を長い間を治療せずに放置したままでいると、臨在歯の歯根吸収や歯肉退縮などが生じ、さらなる不正咬合を引き起こすことがあるため注意が必要です。
その一方で、「21世紀に入ってから永久歯の先天性欠如が増えている」という報告もあり、トラブルは両極端化しているようにも感じます。小児の口腔内を診察する際にはさまざまなリスクを想定する力が求められているのではないでしょうか。
さて、以下の2症例のような口腔内を見て、どのような印象をもたれますか?それぞれの異常を早期に発見していれば、ここまでの重症化は防げたのではないでしょうか?さらには、異常が現れる前にリスクに気づき、適切な対処を行なっていれば、隣在歯の歯根の吸収といった異常歯による悪影響を未熟に防ぐことができるのではないでしょうか?

☆永久歯の先天性欠如
永久歯の先天性欠如(以下、先欠)は部位や本数によってはさまざまな歯列、咬合異常の原因となるため、小児期からの健康な口腔の成育を促すうえで大きな問題となります。永久歯の先欠の発生頻度は、ここ60年という短期間に増加しているともいわれており、近年テレビや新聞などのメディアでも報道される機会が増えています。その影響で当院の初診患者さんのなかには、「歯の本数が足りているか調べてほしい」という親御さんも少なくありません。先欠を早期に発見、治療をしていくうえではさまざまな方法があるので、1つの方法にこだわらずに、柔軟に対応していく必要があります。また6歯以上の先欠では、矯正治療の際には保険が適用になります。
いずれの異常も、早期からの気づきと管理がとても重要です。そのためにまずはパノラマX線写真の撮影と観察を徹底しましょう。パノラマX線写真の撮影時期を逃してしまったとしても、同じ口腔内で歯の交換に大きな左右差がある場合は、これらの異常を疑いましょう。実際の臨床で遭遇した際には、複数の専門家と連携をとりながら管理、治療する必要があります。

デンタルハイジーン参照 山下