こんにちは。歯科衛生士の秋山です。
今回ははみがきの歴史と口臭対策をお話しします。

はみがきの伝来

歯みがきの始まりが仏教からだったと、皆さんはご存知でしたでしょうか。古代インドでは、お釈迦様が、弟子たちの口がくさいため、仏前に詣でる前に歯木で歯を清掃することを勧めました。
仏教のお経に( 歯木を噛んで歯をみがく)、(舌の上をこそぐ)、(口をゆすぐ)で口中を清めなければならないと説かれています。
歯木を使って歯をみがく行為は、仏教の伝来とともにインドから中国に渡りました。16年間インドで修行した中国の僧侶・玄契三蔵が、帰国して歯木を使った歯みがきを中国に伝えたといわれています。
中国ではニームの木がないため楊柳の小枝を歯木に使ったことから「楊枝」という名称になりました 。

歯ブラシのはじまり

歯ブラシは、中国の遼や宋の時代に考案されました。牛の角や動物の骨で作った柄に、馬毛を植えたものが元祖で、その後、中国の歯ブラシはシルクロードを経てヨーロッパに伝わりました。
日本で始めての歯ブラシは、明治5年に大阪で発売された鯨楊枝です。これは、西洋の歯ブラシをまねて、鯨の髯を柄にして馬毛を植えたものでした。その後、竹の柄に豚毛を植えた竹楊枝、大正期にはセルロイド柄の歯ブラシになります。語尾に楊枝とつくのは、江戸時代の房楊枝の名残りで、明治時代の歯ブラシは歯楊枝と呼ばれていました。歯ブラシという表現は、大正3年にライオンが売り出した牛骨柄の万歳歯刷子からです。

口臭と対策

誰もが気になるお口のトラブル──それが口臭です。日本歯科医師会が2016(平成28)年に発表した調査によると、自分の口臭が気になった経験がある人は80.6%に上り、女性(85.3%)が男性(76.2%)よりも自分の口臭を気にしていることがわかりました。
その結果を年代別でみると、女性は30代、40代が最も高いことがわかりました。一方男性は10代が最も高く、20代、30代で低下していきます。つまり10代は男女とも口臭を意識し、それ以降女性は年代の上昇とともに気になる度合いが高まるのに対し、逆に男性は気になる度合いが低下し、30代が男女の意識に最も差がある世代であることがわかりました。
また自分の口臭を他人から指摘されたことがある人は約40%に上り、男性の方が女性より多いという結果が得られました。この理由として男性は女性に比べて口臭に対する意識が低いと考えられることや、女性の口臭は他人から指摘しづらいという側面もあるのかもしれません。

若年層の口臭の原因として重度の歯周病、歯牙の破折、重度のむし歯、清掃不良などがあげられます。一般的に口臭の80%以上は口腔ないとに起因するといわれており、揮発性硫黄化合物がその原因物質とされています。この化合物の発生源は歯の周りの汚れのプラークと舌表面の汚れの舌苔(ぜったい)となっていることが多いと考えられています。このたの口臭を防ぐ対策として、適切な歯磨きに加えて舌苔を取り除くお口のケアが有効です。
舌苔はうがいで取り除くことができないため、歯ブラシや専用の舌ブラシなどで舌を清掃する必要があります。
舌の奥から手前にブラシを軽い力で動かして清掃します。
このときに力を入れすぎると、舌の粘膜や味を感じる味蕾(みらい)を傷つけてしまうことがあるため、軽いブラッシングを心掛けましょう。

なお、口臭は歯や舌などのお口のケア不足のほか、内科疾患などが原因で発生することもあります。
さらに口臭を気にし過ぎるストレスか。全身の健康に悪い影響を与えることもあるため、歯や舌の清掃を行っても口臭が気になる人はかかりつけの歯科医などに相談してください。

日本歯科医師会参照