歯が割れてしまう理由には、外傷や咬合力(噛む力)、歯の治療で歯が薄くなる、加齢などさまざまです。

その中で今回は加齢による歯質の変化で歯の破折が起こる理由についてお話します。

歯が歳をとってくると・・・・・・

虫歯や歯周病は、個人のリスクに応じてメインテナンスをすることにより、多くのケース(むし歯・歯周病)で予防できることが知られていますが、依然として歯の破折には対処に苦労する場面も多く、とりわけ歯根破折への対応はますます重要となってきています。

歯根破折の発症は年齢とのかかわりが指摘されており、年齢別に垂直歯根破折歯を調査した結果、40歳代以降の上下顎大臼歯(6.7番目の歯)および上顎小白歯(4.5番目の歯)に集中しており、圧倒的に失活歯(歯の神経を失った歯)に多いことがわかっています。また、亀裂を生じた歯を調べると、亀裂は40~50歳代で好発し、 特に上下顎第一大臼歯(6番目の歯)に多く、さらに未修復歯が半数以上を占めていました。

一方で、亀裂破折と診断された歯の調査によると、亀裂・破折の発症は40~70歳代まで幅広い年齢層に認められましたが、加齢とともに第二大臼歯(7番目の歯)に発症が増加する傾向がみられました。

なぜ、加齢とともに破折が増えるのでしょう?

高齢者における歯の破折は、転倒などによる外傷や、歯科治療によって残存歯質が薄くなること、そして、残存歯数(残っている歯の数)の減少による咳合力の過度の負担、虫歯の進行などさまざまな直接的あるいは間接的な要因により引き起こされます。また、加齢によりエナメル質と象牙質の強度が低下することが報告されており、硬組織の加齢変化により歯の破折が生じやすくなると考えられます。

また先程お話したように、有髄歯(神経がある歯)と無髄歯(神経がない歯)では亀裂・破折の確率が圧倒的に無髄歯(神経がない歯)が高いです。また、有髄歯(神経がある歯)は歯冠部分のみが亀裂や破折が起こることが多く、その場合は保存することができる可能性がありますが、無髄歯の場合は歯の根から破折してしまっている場合が多く、その場合は保存することが困難で抜歯に至ることがほとんどです。

破折を防ぐには、どのような治療法が有効か

生活歯に象牙質に及ぶ亀裂が生じていても、歯髄が生活力を保っている場合には、ただちに咬頭被覆冠(被せ物)にて修復することで亀裂の進展をおさえ、歯髄保存にもつながります。また、著しく薄くなった歯根の補強策として、ファイバーポストと接着性材料で修復することにより良好な予後が得られることがあります。そして、全部鋳造冠にて修復することで帯冠効果(抱え込む力が歯にかかり、亀裂の進展を防ぐ効果)が得られ、亀裂の進展を防ぐことができます。

デンタルハイジーン参照 奥野