
今回は助手の長副が赤ちゃんのよだれについて載せます。
★唾液の生理的作用
咀嚼で食物はすりつぶされ、唾液に溶出した成分が味覚を刺激します。また、十分に食片が咀嚼されて唾液と混ざり食塊になると、楽に飲み込むことができます。噛むほど唾液の分泌は増えますが、よく噛まなければ、すりつぶしも唾液も不足して、うまく飲み込めません。なるほど、唾液は固形物の摂取には欠かせない要素です。
そのほか、よく知られている消化作用以外にも、表1に示すように、タンパク質分解酵素などから消化管粘膜を保護するムチンが含まれていたり、殺菌・抗菌作用により細菌感染を防いだり、pH緩衝作用で歯の再石灰化を促すなど、唾液には身体を守る生理的作用があります。
また、食事などの刺激により分泌される唾液だけでなく、常時一定量の唾液分泌があるので、口の中は一日中潤っています。しかし、加齢や服薬などにより分泌が減少すると、日中はさほどでもないのですが、刺激による分泌が減少する睡眠中は口腔内が乾燥し、つらくなります。このように、唾液の分泌量には、個体差や年齢差、また時間差があります。
★よだれ
母乳やミルクだけを飲んでいる赤ちゃんの唾液分泌は、多くありません。下顎乳中切歯が萌出する生後半年ごろに唾液の分泌は増加し、よたれが目立ってきます。離乳が始まる時期に分泌量が急増するのは、極めて理に叶っています。
このころの赤ちゃんは、まだ随意に液体を飲み込めないので、唾液は自然に口の外へ漏れ出てきます。摂食・嚥下機能の発達に伴い、生後10ヶ月ごろからよだれは減少し、離乳完了期にあたる15ヶ月ごろには、起きている間のよたれは目に見えて減ります。ざまざまな性状の食品を処理でき、またコップに入った液体や溜まった唾液も随時飲み込めるようになるからです。
よだれは、唾液の分泌量だけでなく、嚥下機能を反映する現象です。乳首からの哺乳と違い、液体をコップから飲んだり、口の中の唾液を集めて飲み込んだりする作業は、固形物の摂食・嚥下と同様、繰り返し学習から獲得する機能です。発達の個人差も大きく、入園後もよだれが止まらない子どももいますし、“いつも口が開いている”かもしれません。日常生活で困っていなければ、食環境に留意し(表2)、経過をみます。
デンタルハイジーン参照
