歯質の構造異常はエナメル質にもっとも多く起こり、その症状は多岐にわたります。その1つである第一大臼歯切歯限局型エナメル質形成不全(Molar Incisor Hypomineralization:MIH)というエナメル質形成障害をご存じでしょうか.近年になってその存在が明らかになってきましたが、このように述べると患者数の少ない希少疾患のように思えるかもしれません。しかし,被験者が1,000人以上の諸外国の調査をみるとMIHの罹患率は2.8~21.0%であり2,日本国内では東京歯科大学小児歯科学講座が2012年に千葉県八千代市で小学生1,753名を対象に行った疫学調査では11.9%で3,その後に日本小児歯科学会が行った4,496人を対象とした全国調査によると罹患者率はさらに高い19.8%でした 。 これらの罹患率は軽症から重症のものまで含めた数字ですが,日本の小児の1~2割がMIHに罹患していることを示しています。

それにもかかわらず、日本の歯科関係者におけるMIHの認識度はいまだに低いといわざるをえません。臨蝕と考えていた症例のなかに「ひょっとしたらあれがそうだったのか!」と思い当たる方がいらっしゃると思います.

MIHってどんな疾患?

MIHは「1本以上の第一大臼歯と切歯に限局して発症するエナメル質形成不全」で、重症な場合は象牙質に及ぶこともありますしたがって、第一大臼歯あるいは切歯にエナメル質形成不全を発見したら,ほかの切歯と第一大臼歯をくわしく調べる必要があります。

発症した歯に認められる症状は変色や実質欠損が主ですが、著しい知覚過敏を示すこともあります.1本の歯に占める罹患領域はまちまちです.通常,複数歯に発症するエナメル質形成不全は対側同名歯に現れる症状が似ていることが多いのですが、MIHでは対側同名歯と比較してもまったく異なることが多く,罹患部位も重症度も左右で非対称です5~8)また、萌出直後は実質欠損のない変色歯であったものが後に歯冠崩壊を起こすこともあります。

MIHの原因は?

MIHは乳幼児期に起こったさまざまな要因との関連が疑われてきました。おもなものとしては喘息や肺炎,呼吸器感染,中耳炎,扁桃腺炎,水痘,乳幼児期のアモキシシリンの投与,母乳中のダイオキシン、妊娠中の喫煙などがありますが,どれも因果関係が明確になったものはなく、最近では血清または血漿中の25-ヒドロキシビタミンD濃度の低下も原因として疑われています。

エナメル質形成不全と簡蝕を見分けるポイントは?

MIHという疾患名が登場したのは比較的最近で2001年のことです。これは先進国で小児のう蝕罹患率が激減したため,う蝕と間違えられていたエナメル質形成不全が識別しやすくなり、MIHの存在が明らかになったものと考えられます.

①色調の異常がある

②粗造な部分がある

③歯質が欠損している

④臨蝕検知液で濃染されない

⑤通常,簡蝕罹患しにくい部位に変色,実質欠損部位が存在する

⑥第一大臼歯だけに大きな修復物がある

デンタルハイジーン参照 大石