
こんにちは!歯科衛生士の中島です。
今回は睡眠とブラキシズムに関してのお話です。
♦︎睡眠を理解する
ノンレム睡眠とレム睡眠
睡眠時ブラキシズム(歯ぎしり)を理解するうえで,睡眠についての基礎知識は必須です。
睡眠している状態は大きく分けて“ノンレム睡眠”と“レム睡眠”の2種類に分けられます。
ノンレム睡眠は脳波による判定でさらに睡眠段階1から3までの3段階に区別され、一般に入眠する(眠りはじめる)と“浅いノンレム睡眠”から始まり、徐々に“深いノンレム睡眠へと睡眠が深くなっていきます。深いノンレム睡眠の後、睡眠が浅くなり今度はレム睡眠へと移行します。
レム睡眠では脳は活発に活動していますが、筋肉は緊張がとけいてる状態でいます。夢を見るのもこの睡眠段階です。ノンレム睡眠とレム睡眠は約90〜110分
で交互に出現し、睡眠周期をつくり、一晩に3~4回繰り返されます。朝方に深いノンレム睡眠は減少し、レム睡眠の時間が長くなります。
♦︎一過性の覚醒、マイクロアローザル
睡眠は発達・加齢とともに変化し、新生児では1日の総睡眠時間が約 16 時間で50%がレム睡眠ですが、成人では1日の総睡眠時間が7~8時間で約 20%がレム睡眠と次第に減少します。また、中年以降になると、深いノンレム睡眠が次第に短くなり、全体として睡眠が浅くなります。また、同じ睡眠段階にあっても、睡眠状態は20 ~ 60 秒程度の間隔で変化しています。たとえば“目覚め”に至らない 10 秒程度の短い一過性の覚醒”がしばしば発生しますが、これを睡眠検査ではアローザルあるいはマイクロアローザルとよび、睡眠分断の指標に用います。
この一過性の覚醒は、脳波の変化や心拍数の急速な増加を伴い、しばしば筋活動性が高まり体動とよばれる寝返りなどの運動と同時に観察されます。正常睡眠でも毎時 10~20回発生しますが、多発すると睡眠が不安定となり睡眠の質が低下します。
ただし、睡眠中の中枢神経、交感神経の活動はいずれも抑制されいます。睡眠の大きな目的である体を休めるため、こうした抑制機能が働いてるわけです。
♦︎睡眠時ブラキシズムのリスクファクター

睡眠時ブラキシズムが多因子性であることは広く認められています。文献的に報告されているリスクファクターをあげます。
まず、①「不眠症や睡眠時無呼吸症候群、睡眠時逆流性食道炎、周期性四肢運動障害など。睡眠障害との関連性が報告されています。
また、②中枢神経に作用する抗うつ薬、精神刺激薬など、特定の薬の服用が睡眠時ブラキシズムを悪化させることも報告されています。
③嗜好品についても睡眠前の過度な飲酒・喫煙、カフェインの過剰摂取などは睡眠時ブラキシズムを悪化させる可能性があります。
④社会心理学的要因、特にストレスは長きにわたり重要なリスクファクターとしてとらえられており、睡眠時ブラキシズムを自覚する人はそうでない人よりも不安傾向を示すことが多く、ストレスレベルが高いという報告が認められていま
す。また、日々の睡眠時ブラキシズムのレベルが日中に経験したストレスの影響を受けて変化することも報告されています。
⑤遺伝的要因についても数多くの報告があり、睡眠時ブラキシズムを自覚する人の家族、親族同様に睡眠時ブラキシズムが認められる傾向があることや、二卵性双生児よりも一卵性双生児のほうが2人がともに睡眠時ブラキシズムを自覚する頻度が高いこともわかっています。また、筆者らの最新の研究により、特定の遺伝子多型との関連性も明らかになってきました。
以上が現在、広く認められているリスクファクターですが、いずれの要因も、それのみですべての睡眠時ブラキシズムの発生を説明できるわけではなく、患者さんによってそれぞれの寄与度は異なります。たとえばストレスが強く発症にかかわっており、ストレスのレベルが高くなると睡眠時ブラキシズムが高頻度で認められる症例もありますが、そういった患者さんは全体の8〜10%ほどです。
デンタルハイジーン参照