

皆様、”TCH”という言葉をご存知でしょうか。
Tooth Contacting Habit の略で、日本語に訳すと「歯の接触癖」上下の歯を接触させ続けてしまう癖のことを言います。TCHは顎関節症だけでなく歯周病にも影響があると考えられています。
歯が接触し続けることによって、咬むための筋肉は持続的な緊張状態により疲労し、顎関節にも長時間負担がかかるので顎関節症の原因や、影響を及ぼす因子としてとらえられるようになってきました。その他にも、知覚過敏や歯周病の悪化にも影響すると考えられています。
TCHは就寝中の噛みしめに比べて弱い力しか歯や歯周組織にかかりません。そんなことで歯周病にまで影響するのでしょうか?「顎関節に痛みがある」と来院される患者さんに対して歯科医が「普段歯と歯が接触していませんか?上下の歯は少し離れているのが正常な状態です。日常での歯のポジションを意識してみて下さい」と話しているのを聞くことがあります。歯と歯が触れている程度の力なんて、そんなに大したものではないのでは…?と思った患者さんも居るかもしれません。
しかし、本来は食事や会話の時にしか上下の歯は接触しないのが健常な状態で1日の上下の歯の接触時間は20分以内、と言われています。1日3回の食事を摂ることを考えると、接触する時間が20分以内というのはあまりに少ないかのように思えます。実際は、食事の際に上の歯と下の歯の間には食物があるので、歯と歯が直接触れ合う時間はごく僅かなんです。歯を支える歯周組織には、通常その程度の時間しか負荷がかかっていないのにTCHのような長時間・持続的に負荷がかかった状態となると歯周組織に影響を及ぼしてしまうことでしょう。
歯周病の原因としてのブラキシズム(無意識のうちに行っている噛みしめや歯ぎしりなどの総称)には・グラインディング(こすりあわせ)・タッピング(かちかちと嚙合わせる)・クレンチング(垂直のかみしめ)に加えてTHC(歯の接触癖)も含まれると捉えられます。
TCH以外は就寝中の習癖で、意識して直すのが難しいのですが、TCHは覚醒時~就寝中の習癖です。普段生活している中で、今自分の歯はどのようなポジションにあるのか少し意識をしてみて下さい。
TCHがある人は舌のポジションが理想的ではないことが多いようです。確認してみましょう!
1 上顎前歯口蓋側(上あごの真ん中の前歯の少し後ろの歯茎辺り)に舌の先を軽く触れる
2 前歯舌側面(上あごの真ん中の前歯の裏側)に舌の先を軽く触れる
1のポジションをとった際に、上下の奥歯は触れていましたか?離れていましたか?2のポジションをとった際にはどうでしたでしょうか。おそらく、1のポジションでは上下の奥歯は離れていたのに、2のポジションでは触れていたのではないでしょうか。
舌のポジションが良くないと、上下の奥歯が触れてしまってTCHになりやすいそうです。顎関節症や歯周病の予防のためにも、是非、日常的に歯や舌のポジションを意識してみて下さい。
受付・助手:たかさわ