歯周組織に炎症が起きる歯周病。この“炎症”を掘り下げてみると、私たちの体が自分を守るためにもともと持っている「免疫機能」と大きく関わっていることがわかります。

 

1.炎症は、体が細菌と戦っている証拠

 

口腔ケアを十分に行なわず、歯肉周辺の細菌をそのままにすると、歯肉が赤くなったり腫れたりします。
歯磨きやプロービングの際に出血が見られることも。このとき、歯肉周辺では何が起きているのでしょうか?
歯周病菌がいつまでも残っていると、体はなんとかしてそれを排除しようとします。血液や唾液中の警備隊(=免疫細胞)が活発に動き出し、歯周病菌と戦うのです。これが歯肉の腫れや出血といった「炎症」として出現。
毛穴にバイ菌が入って顔にニキビができるのと同じ仕組みです。
健康を害する物質から身を守るために、私たちの体にはもともと免疫力が備わっています。「歯肉炎」は、細菌がそこに残っていることを伝える“体からのサイン”だと言えるでしょう。

2.歯周病と免疫の関係

 

このように、歯肉周辺の細菌と免疫細胞が戦い始めた状態が「歯肉炎」。歯磨きやクリーニングなどによって細菌をしっかり除去することができれば、炎症はすぐにおさまります。免疫細胞は戦う必要がなくなるからです。
でも、細菌が除去されないままだと……?
細菌と免疫細胞の戦いの場は、歯周ポケットの中にまで広がります。歯周病菌はそこで「外毒素」や「内毒素」と呼ばれる強い毒を出すので、免疫細胞はさらに反応! 戦いはますます激しくなり、歯周ポケット内には歯周病菌や免疫細胞の死骸でいっぱいに。これが「膿」の正体です。
そしてさらに戦いが続くと、細菌と戦っていたはずの免疫細胞がなんと、歯槽骨(歯を支える骨)を溶かそうと働き始めます。
身を守るための免疫細胞がナゼ……?
実はこれ、“トカゲの尻尾切り”と同じ仕組みではないか、と言われています。被害が体内に及ばないよう、被害を最小限に食い止められるよう、歯周組織や歯をあえて失う選択をするのです。歯周病が免疫機能と大きく関わっていることが、ここからもわかりますよね。

3.細菌除去+“免疫力アップ”

 

歯周病菌と免疫が戦っている状態が「炎症」。だとしたら、炎症を抑えるためにまず必要なのは、細菌を取り除くことです。
炎症が歯肉にだけ起きている「歯肉炎」であれば、歯ブラシやデンタルフロスを使って細菌をしっかり取り除くだけですぐに健康な状態に戻せます。
また、免疫力を高めることも同じくらい重要!というのも、免疫細胞が強ければ歯周病菌との戦いに勝てるからです。
逆に免疫細胞が弱い状態だと、細菌がほんの少ししかいなくても炎症が起きてしまいます。
実際、プラークコントロールができている人で、いつもは歯肉も引き締まっているのに、なぜか今日は歯肉が腫れている。
それは、免疫力が何らかの理由で下がっている証拠。
ヒアリングをすると「仕事が忙しい」「寝不足」「体が疲れている」「ストレスがたまっている」といった答えが返ってくるはずです。
健康な歯肉を保つには、細菌をきちんと取り除くだけでなく、免疫力を高い状態に保つことも重要。外と内、両方のケアが欠かせないのです。

4.免疫力を高める方法

 

歯周病予防に欠かせない免疫力。実は、20代をピークに下がることがわかっています。

さらに、ストレスや体の疲れ、寝不足、季節の変わり目などによっても低下。それに応じて歯周病はもちろん病気のリスクが上がるため、日ごろから意識して高めておくことが大切です。

 

免疫力アップには、こんな方法が!

●適度な運動でストレスを解消
●睡眠時間をしっかりとる
●栄養バランスの取れた食事を心がける
●免疫力を高める乳酸菌サプリメントを摂る

タフトくらぶ web 参照  牧野