こんにちは。歯科衛生士の松尾です。

最近急に暑くなりましたが、皆さん体調大丈夫ですか?

今回は歯周病と牛乳についてお話します。

 

 

牛乳を飲むと歯周病が治る?

 

 

生活習慣病にかかわる生活習慣のなかに”食習慣”があります。

私たちの身体は食べたもので作られて、食べたもので動くので、”何を食べるか”ということはいろんな場面で影響を及ぼすことになります。

 

 

 

残念ながら”歯周病と食”に関する研究は限られているため、患者さんに伝える価値のある情報は存在しないのですが、実際、患者さんから「何を食べれば歯ぐきにいいですか?」なんていう質問も受けることも少ないです。

 

しかし、X線写真を説明しているときなどに、「骨が溶けている」というような話をすると、「じゃあ、牛乳を飲んでカルシウムをたっぷり摂ると治りますか?」と聞かれることはあります。

 

そこで食に関してはこの話題だけ取り上げてみたいと思います。

 

 

アメリカの大きな疫学調査の結果を日本人(サンスターの西田さん)が解析した論文

 

 

 

これによるとカルシウム摂取量の少ない人ほど、付着の喪失リスクが大きくなっています。男性でも女性でも同じ傾向が出ましたが、特に女性ではその影響が大きくなりました。ですが、これをもって「カルシウム不足で歯周病になる」とは結論づけることはできません。

 

この研究は、ある時点で横並びの要因について関係性を調べただけです。

 

 

メガネと風邪は関係ある?

 

 

たとえば、ある教室で調査をしたとします。風邪を引いている人と引いていない人、メガネをしている人としていない人を調べて、風邪を引いている人はメガネをしている可能性が高いという結果が出たら、「メガネをかけると風邪を引く」という結論になってしまいます。

 

カルシウムは身体のあらゆるところで必要なミネラルなので、大小含めていろんな影響を及ぼす可能性があり、1つの研究で結論を出すのは無理があります。

 

 

でもでも、患者さんが聞きたい、知りたいのは

 

 

「牛乳を飲むと、なくなった骨が再生するのか?」ということで、骨が欠損した部分にどんどんと牛乳由来のカルシウムが積み重なっていき、初期の齲蝕が再石灰化するテレビコマーシャルのように治りそうなイメージなのかもしれません。

 

でもそれは残念ながら起こりそうにありません。起こるのであれば、療法をする代わりに牛乳を”処方”しています。

 

一歩譲って「残っている骨が丈夫になる可能性はありますが、なくなった骨は元には戻りません」という説明になってしまいます。結果、患者さんといっしょに「残念!」と思うことになるのです。

 

 

よい生活習慣・悪い生活習慣と歯周病の関係

 

 

牛乳を飲むという行為は一般的には”よい生活習慣”と考えられています(異論があることも存じあげています)。

 

ということは牛乳を飲むという”よい生活習慣”の方向に顔を向けて健康を目指そうというスタンスになります。

 

これを食べたら”悪い生活習慣”の方向、あれを食べたら”よい生活習慣”の方向と、テレビ番組ではさまざまな食材が取り上げられています。

 

それだけ関心のあることだといえるのでしょうが、未知のことが多いので、“分かりかねます”のお答えになってしまうのが現状です。

 

 

(参考文献 デンタルハイジーン 2020、4月号)