スポーツ・身体活動の重要性は、コロナ禍における不活性の時代において、さらに強くクローズアップされているように感じます。また、スポーツ歯科的な活動の、スポーツの発展、健康の維持増進等に対する効果も大いに期待されているところかと思われます。

 

 

スポーツ歯科的サポートの重要性

 

スポーツイベントに対する、スポーツ歯科的サポートとしては、競技施設内クリニックでの診療、マウスガードの提供、試合会場での臨場があります。また、アンチ・ドーピング活動に関与する歯科医師も少なくありません。歯科衛生士の方々のこれらに関する貢献も今後ますます重要になると思います。

 

そこで今回は、スポーツクレンチングの発現と効果、適切なスポーツマウスガードの使用による顎口腔系、脳震盪への効果の可能性について触れてみたいと思います。

 

 

スポーツと歯の深いカンケイ

 

 

スポーツクレンチングの発現と効果

 

アスリートにとって、十分な栄養摂取のため健全な口腔環境が不可欠なことは疑いの余地はありません。しかし、運動時の頑張りに欠かせない”スポーツクレンチング”についてはどうでしょうか?

 

スポーツクレンチングとはスポーツ時の噛みしめであり、静的な”構え”と動的運動時の両方で起こります。

 

しかし、いまだに多くのアスリートがこのことを意識あるいは理解しているとはいえません。スポーツクレンチングの発現は筋電計を用いた方法で容易に測定でき、インパクト時にボールの力などに負けたくないとき、瞬発力の発揮時、体幹のプレを少なくしてエネルギーロスを少なくする必要があるときなどにみられます。

 

また、パラリンピック競技の車いすの始動時や停止時にもみられることもわかってきています。

 

スポーツクレンチングにはさまざまな働きがあり、大脳皮質の活動性を向上させることなどが知られています。

 

結果として、スポーツクレンチングがさまざまな運動能力、平衡機能、安全性に影響することが理解されています。

 

しかし、不必要な場面での不要な噛みしめは身体を緊張させることになり、円滑な動作を阻害しますので注意が必要です。

 

 

こんなにすごい!スポーツマウスガードの効果

 

このようにスポーツクレンチングは多くのスポーツシーンで発現し、その効果も高いものと思われます。

 

しかし、スポーツクレンチングを安全かつ効果的に行うには、健全な顎口腔系であることが必要です。そのため、スポーツ時の傷害を予防・軽減する必要があり、マウスガードの活用が有効です。

 

マウスガードの顎口腔系外傷への予防・軽効果は、疫学的、実験的に立証され、そのためスポーツ関係者のマウスガードへの認知度は高まり、その普及も進んでいるものと思われます。

 

また、強度のスポーツクレンチングによる歯の咬耗や破折などの障害に対する効果も認められているため、筋力アップのためのトレーニング時の使さらに、間接的な外力による脳震盪に対する効果も期待されています。

 

脳震盪は頭部に対する直接的な衝撃力だけではなく、下顎や身体への衝撃力が頭部へ間接的に作用することで起こることも少なくありません。

 

その症状は、意識の消失だけではなくさまざまで、急性硬膜下血腫などでも初期に同様な所見を呈することがあるので細心の注意が必要です。

 

この脳震盪を軽減・予防するために適切な咬合関係を有するマウスガードの噛みしめが有効と考えられています。

 

ラグビーの”コンタクト”やサッカーの”ヘディングシュート”におけるマウスガード装着時の噛みしめは、頭部の加速を減弱させるとの報告もあり、間接的な外力による脳震盪の予防・軽減への効果が期待されます。

 

 

 

デンタルハイジーン参照
受付 山下