
こんにちは!歯科衛生士の中島です。
今回は口臭の原因についてお話しします。
▼口臭とは
口臭は、呼吸や会話のときに口から出る息のにおいで、他人が不快と感じるものをいいます。
口臭予防に対する人々の関心は高まっており、日本歯科医師会の「歯科医療に関する意識調査」(2016年)によると、口臭は「歯や口の悩み」の第3位で、口臭が気になった経験が「ある」人は、年齢や性別に関係なく8割にのぼります。
口臭の存在は、人間が社会生活を行うための基本となるコミュニケーションにおいて大きな障害となります。自分に口臭があるために、人に迷惑をかけている」といつも気にしていると、心理的に不安になり、だんだん行動が消極的になり、良好な人間関係を築くことができなくなってしまいます。
▼口臭の原因物質
物質口臭の原因物質は、口の中のいろいろな細菌がタンパク質を分解してつくる、揮発性硫黄化合物(VSCs)であることがわかっています。
そのなかでも、卵が腐ったようなにおいがする硫化水素やメチルメルカプタン、生ゴミのようなにおいがするジメチルサルファイドが3大原因物質とされています。
口臭はこれらがさまざまに入り混じったもので、一定以上のレベルになると不快なにおいとして感じられるのです。
また、検出される量は少ないのですが、アンモニア(し尿のにおい)、トリメチルアミン(魚の腐ったようなにおい)、 インドール、 スカトールなどの揮発性窒素化合物、イソ吉草酸(むれた足や靴下のようなにおい)、酪酸(バターや乳の腐ったようなにおい)、プロピオン酸、カプロン酸などの低級脂肪酸、さらにアセトン(甘酸っぱいにおい)などの揮発性有機物が、口臭のにおい成分のなかに含まれることがあります。
▼VSCs発生のメカニズム
口臭のおもな原因であるVSCsは、新陳代謝などによって剥がれた口腔粘膜上皮、血球成分、細菌の死骸などのタンパク質から産生されます。
これらの物質を、口の中の細菌が分解してシステインやメチオニンなどの含硫アミノ酸が生成され、そこから、VSCsの3つのガス(硫化水素、メチルメルカプタン、 ジメチルサルファイド)が発生します。
このタンパク質成分の多くは、舌苔として舌に付着しています。
そのため口臭の原因の多くはプラークなどではなく、舌苔から産生されるのです。
▼口臭の原因は口腔内が多い
口臭は、大きく生理的口臭と病的口臭に分けられます。
いずれも口臭発生にはさまざまな要因が関連していますが、歯科領域に原因のあるものがとても多いといわれています。
歯科領域の口臭の原因としては、舌苔や歯周病、唾液分泌の減少、義歯の清掃不良、重症化した齲蝕などがあげられています。
▼生理的口臭
生理的口臭は誰にでもあるもので、増減が1日のうちで強くなる時と弱くなる時があります。
それには唾液と口腔内細菌のバランスが関係しています。
唾液には口の中のタンパク質成分を洗い流す作用をはじめ、抗菌作用や粘膜保護作用などがあり、唾液の分泌が少ないと口臭が強くなりやすいのです。
就寝中は唾液の分泌が減り、細菌が増殖するため、一般的に口臭がもっとも強いのは起床直後です。
起床後に、歯磨きや食事をすると唾液の量が増え、細菌を洗い流したり、口の中のpH値が低くなるので、口臭は弱くなります。
また、ストレスや緊張があるとき、空腹時は、一般に口臭が強くなりがちです。
ストレスのある状態では唾液量が減少し、通常よりもネバネバした唾液が分泌されます。
そのため、口の中に汚れや食べかすが残りやすくなり、臭が発生しやすくなります。
▼食事や嗜好品、その他による口臭
このほか、飲食物・嗜好品による口臭があります。
ネギやニラ、ニンニクなどを食べた後に吐く息は臭くなります。
タバコを吸う人の息からはタールやニコチンのにおいがします。
アルコールも体内で吸収され、肺から揮発性のアルコール成分が排出されるため、飲酒者の吐く息は臭く感じられます。
飲食物・嗜好品による口臭は原因が特定でき、 時聞の経過とともに減る一時的なにおいなので治療の対象となりません。
女性の場合、ホルモンバランスとの関連で、おもに月経前や月経中、排卵期に口臭が強くなる人がいます。
このように、誰でも一時的に口臭が強くなることはあるので、気にしすぎないことも大切です。一方、注意が必要なのは病的口臭です。
▼病的な口臭
口腔内の疾患、特に歯周病は口臭との関連が強いといわれます。
歯周病になって歯肉から出血があると、この血液成分によって嫌気性歯周病原細菌が増殖し、血球成分などのタンパク質を分解し、口臭の原因となるVSCsを作り出します。
VSCsの存在が、さらに歯周病を悪化させる場合もあります。
また、歯周ポケットから出てくる歯肉溝滲出液にはメチルメルカプタンの元になるメチオニンが含まれており、口臭と歯周病には相互に強い関連が認められます。
なお、口腔以外では、鼻やのどの病気、呼吸器の病気、糖尿病などが原因になることがありすが、口腔と比べるとその可能性はとても低いです。
▼心因性の口臭
一方、診療の場においては、診察しても、特に医学的異常所見がなく、口臭の測定を行っても口臭レベルが高くない人がいます。
口腔清掃状態は良好で、齲蝕や歯周病はなく、全身状態も健康で、特に治療の必要はないが、本人は「どこかに原因があって、口臭がある」と考えています。
口臭の存在を言葉で指摘されなくても、相手の態度、物腰、様子などから自分に口臭があると思い込み、対人恐怖や社会的不適応を生じている場合もあります。
デンタルハイジーン参照