
まずは筋力強化
たくましく育ててほしいと願う背景には, 最近の子どもたちの筋力の低下があります.偶然なのですが, 1979年発行の『子どもの体力』 といわが家の書庫にあるのをみつけましたそのころから, 体力の低下は叫ばれていましたが,2019年の調査でも, 体力の低下が大きな問題として取り上げられていました。 このままで行くと,将来はもっと悲惨な値になっていく可能性があります.
言語聴覚士によると,「か」行が発音できないのは, 舌根部をもち上げる筋力が不足しているからだそうです. だとすれば,口蓋に舌を押しつけて正しく嚥下ができないのも, 筋力の不足によるものと推察することができます. 正しい嚥下では,食塊は舌背部に集められ,歯はしっかり咬んだ状態で,舌が口蓋に強く押しつけられることにより咽頭部へ, そして,喉頭蓋によって気道が塞がれることにより, 食道へと送られていきますが,この際に, 関連する筋肉が正しく力強く働くことが重要なのです。
まずは。保護者の方には, 子どもの筋力アップが大切であることを伝えてください。 乳幼児にとっての食は,栄養補給のためだけではなく,同時に, 口腔周囲の筋肉を鍛え, 骨格を形成していくためでもあることを強く意識する必要があると 考えています。乳幼児期に,飲み方, 食べ方を正しくたくましく習得することにより. 人生100年時代の食を支えられる能と形態が備わるといっても過 言ではないと思っています.
生まれたばかりの赤ちゃんは,探索反射, 吸啜反射などの原始反射で母乳やミルクが飲めるようにプログラム されています,喉の形態もサルに近いので, 寝かされた状態で飲めるのです.飲んでいる間も, 顎をしっかり動かし,側頭筋もぴくびく動いていますので, 飲みながら筋力トレーニングをしているような感じです.
その後,おすわりを始め, たっちもあんよもできるようになって歯固めに歯も生えそろってき ます. このおすわりができるようになるころになるような茹でたごぼうや ブロッコリーの芯の部分を持たせて, 噛むことによって筋肉トレーニングさせることがいいようです. 生えたときに噛める力を,歯がないときから鍛えておくのです. 日本歯科医学会から出された” 口腔機能発達不全症に関する基本的な考え方”や, 厚生労働省による”授乳・ 離乳の支援ガイドに基づいた内容とはすこし異なるかもしれません が.「昔のように野生的に!」を推奨したい私としては, 歯がない間に鍛える方針に賛成したいと思っています.
もうすこし進んでいけば,手づかみ食べを勧めてあげてください. 食べ散らかしてしまうので, お母さん方は嫌がってしまうのですが.そこはがまんして, 動物の一員であることを思い出してもらいましょう,自分で見て, 手でつかんで,口に持っていって,かじり取る。 という一連の動作の習得がとても重要だといわれています. いつまでも一口サイズの軟らかい食べ物をスプーンで与え続けて. いきなり大人と同じ食べ物に移ると、丸呑みをしてしまったり, 間違った飲み込み方を覚えたりしてしまうことが推測されます.
また,スプーンを噛んでしまったり, 歯ブラシを押し出したりする場合には, 原始反射が残存しているといわれています. 口唇を中央に向かって,やさしくマッサージしてあげたり, 下口唇をつまんだり,口腔内に手を入れて, 頰粘膜を伸ばすようにしてあげてください. 歯ブラシの柄の部分を使ってもいいでしょう. 歯磨きをしてあげようとして下顎前歯部の唇側にミラーや指を入れ ると,強い力で押し返されることを経験したことか思います. それは反射が残っているからなのです, そういう子のほとんどに舌癖があるのを経験しています. 力が入ってしまう部分を,外側から, 内側からやさしくマッサージしてあげてください. 保護者の方にもお願いしてみましょう.
さらに,自分で食べる意欲を育ててあげることも大切です. せっかく苦労して用意した離乳食を食べてくれない. 食べるのにかなりの時間がかかってしまう. と悩んでおられるお母さんも多いと聞きます.そうではなくて, ツバメの巣の子どもたちがお腹をすかせて, 一生懸命口を開けて待っているのと同じように, 食べ物に貪欲に食らいついていく野生的な子ども, 昔はそれが普通だったはずの子どもに育ててほしいと思います.
くり返しになりますが,乳幼児期の飲むこと食べることは, 栄養補く,飲むこと食べることをとおして,顎や舌の筋肉を鍛え, 正し能, 発音機能を育てているのだということをしっかり保護者の方に伝え てあげてください.それと同時に, 口を閉じて両方の奥歯でしっかり噛む.足をしっかりつけて, 姿勢よく食べる.飲み物は食事中には出さない.なども, 食に関する大切な伝達事項です.
そして,走り回れるようになったら, 大いに外遊びを推奨してあげてください. 石山育朗先生は日本咀嚼学会雑誌に, 咬合力と握力には相関があったと報告しています, たしかに全身の筋力が弱いのに咬合力だけは強い人, あるいはその逆の人も考えにくいでしょう.遊び場の不足, ゲームの普及など,子どもを取り巻く環境は悪化していますが, だからこそ,積極的に取り組む必要があると思っています.
デンタルハイジーン参照 大石
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