歯科助手の長副です。

今回は乳歯の生え変わりについてお話しします。

○乳歯から永久歯への生えかわり

身体の成長にともなって顎も成長し、6歳頃から12歳頃にかけて「乳歯」から「永久歯」へ生えかわります。

生えはじめたばかりの歯は未完成で、やわらかく酸に溶けやすいため、簡単にむし歯になってしまいます。

歯の根が完成するまでには、生えてから2〜3年かかります。

永久歯が生えそろうと、かむ力が強くなり、いろいろな食べ物を上手に食べられるようになります。

第3大臼歯(親知らず)は生えない人もいますが、17〜21歳と最も遅く生えてきます。

○顎の中で作られる乳歯・永久歯

乳歯のもとになる歯胚は妊娠7〜10週目につくられます。

永久歯の中で最も早く生えてくる第一大臼歯や前歯は妊娠3〜5ヶ月頃に歯胚ができ、時間をかけて成長していきます。

生えかわりが始まる6歳頃には、あごの中で生える準備をしています。

○永久歯へ生えかわる仕組み

 

  1.  顎の中(乳歯の下)で永久歯のもとになる歯胚ができ、時間をかけて成長していきます。
  2.  永久歯の歯冠部が完成し、歯の根の部分が作られ始めると、乳歯の根を溶かす細胞が現れ、永久歯の上にある乳歯の根は少しずつ溶かされていきます。
  3.  乳歯の根が溶けていくと、乳歯はグラグラになり抜け落ち、永久歯が顔を出します。

○子どもの歯の特徴

乳歯と聞いても、実際どういった形をしていたのかを覚えている人は少ないのではないでしょうか。

子どもの歯である乳歯は、大人の歯である永久歯とは異なる特徴をいくつか持っています。

○永久歯より本数が少ない

乳歯は生えてくる本数が永久歯より少ないのです。通常、永久歯は28本、親知らずを含めると32本生えてきます。
一方、乳歯は全部で20本しか生えてきません。これも、子どもの小さな口腔内を想像すると容易に理解できるかと思います。

あの小さなスペースには、32本もの歯を収めることは不可能なのです。

○乳歯はエナメル質と象牙質が薄い

それから、乳歯と永久歯には構造上の違いも存在しています。歯は最も外側にエナメル質があり、その下は象牙質で覆われています。乳歯は永久歯と比べると、エナメル質と象牙質が薄くなっているのです。

○子どもの歯並びをキレイに保つために注意すべき4つのこと

子どもの歯並びに関して、まず知っておいて頂きたいことがあります。それは、乳歯列と永久歯列では、かなり異なる点があるということです。

これは、子どもの歯並びをきれいに保つ上でも重要なポイントといえます。

 

1.正常でも歯並びが悪く見えることがある

子どもの歯は大人の歯と比べて、大きさや形、生えてくる本数も違っています。そのため、乳歯列の時期は歯並びがとても悪く見えることが多々あるのです。
具体的には、歯と歯の間が大きく開いているように見えます。いわゆる「すきっ歯」と呼ばれるような症状が、前歯だけでなく歯列全体で見られることもあるのです。
一見すると、歯並びがとても悪いように見えますが心配はいりません。なぜなら子どもの歯は、大人の歯が生えてくることを見越してスペースを確保しているのです。もしも、20本の乳歯が隙間なく、歯列に収まっていたら、次に生えてくる28本の永久歯が収まり切りません。ですから、乳歯の段階での歯と歯の隙間については、例外を除けば気にする必要はないといえます。例外とは上唇小帯の位置異常による正中離開(すきっ歯)です。こちらは形成手術を行えば改善できます。なるべく早い時期で永久歯が生え揃う前に行うのが良いです。

2.虫歯は歯並びを悪くすることがある

乳歯列期における歯列の乱れは、それほど憂慮するものではありません。けれども、乳歯の形が著しくおかしかったり、黄ばみや黒ずみなど、歯の変色や着色が目立つ場合は歯科を受診することをお勧めします。まず第一に、乳歯の色や形に異常が見られる場合は、何らかの病気にかかっている可能性があるからです。最も多いのが虫歯です。子どもの歯である乳歯は、エナメル質や象牙質が薄く、虫歯になりやすい傾向が強いです。また子ども、糖分が豊富に含まれた間食を頻繁に行います。そうして虫歯が誘発され、歯を変色させたり、溶かして形をいびつにすることがあるのです。

ここで重要なのが、乳歯の虫歯を放置すると、結果的に歯並び全体を悪くする可能性があるという点です。時が来れば、乳歯はすべて抜け落ちて、永久歯に生え変わります。それなら虫歯が原因で抜け落ちようが、特に変わりはないようにも思えます。けれどもそれは大きな間違いです。
虫歯菌は、周りの歯にも感染を広げていきます。それは、乳歯の下に埋まっている永久歯も例外ではありません。もしも乳歯の虫歯がまだ生えてきていない永久歯に感染してしまうと、生えてきた時点ですでに歯質がボロボロになってしまっていることもあり得るのです。あるいは、正常に発育できないこともあります。ですので、乳歯の虫歯を放置することは歯列全体に悪影響を及ぼす可能性があるといえるのです。

3.生え変わりの時期のズレは歯並びに悪影響

正常な歯列を獲得するためには、それぞれ適切な時期に歯が抜けたり、生えてきたりしなければいけません。この時期がズレてしまうと、歯の並びも全体にズレることあるのです。そして乳歯の虫歯は、乳歯が抜ける時期や永久歯が生えてくる時期を乱す原因となりますので、注意が必要です。例えば、正常な時期よりも半年早く、乳犬歯が抜けてしまったとします。本来、最初に生えてくる永久歯は大臼歯ですので、場合によっては先に犬歯が生え変わってしまうこともありえます。そうなると、子どもの歯の生え変わり全体が乱れてしまい、歯の並びにも悪影響を及ぼしてしまうのです。虫歯によって乳歯が早期に抜け落ちることで、逆に永久歯の生え変わりが遅くなることもあります。ともあ
れ、乳歯の虫歯は見つけ次第、すぐに治療を施すことが賢明であるといえます。

4.口腔習癖が歯並びを悪くする

子どもの歯並びを悪くする原因として、口腔習癖を挙げることができます。口腔習癖とは、指しゃぶりや舌を前に突き出すような習慣です。こういった癖がある子どもは特に珍しくはありませんが、永久歯が生え変わる時期になっても続いているようであれば、治療を施す必要が出てきます。なぜなら口腔習癖は、歯並びを著しく悪くすることがあるからです。

○前歯に圧力が加わることで出っ歯を誘発

実際に指をしゃぶってみるとわかると思いますが、かなりの圧力が前歯に伝わっています。これを日常に行っていると、前歯が前方へと傾き、出っ歯と呼ばれる歯列不正を生んでしまうのです。舌を突き出す癖も、前歯に同じような圧力を与えるため、出っ歯を誘発するといえるでしょう。ですので、指をしゃぶったり、舌を突き出すような習癖がある子どもに対しては、親御様の方から注意してあげることが望ましいです。口腔習癖は無意識に行っていることも多く、本人では気づきにくい場合が多いのです。

○口が開いていると出っ歯になる

子どもの歯並びを悪くする原因に、開口と呼ばれる症状があります。文字通り口が開いている状態で、子どもには比較的多く見られるものです。日常的に口がほんの少し開いているような状態ですね。実はこの開口も、子どもの歯並びを悪くする可能性があるのです。本来、私たちの口はきちんと閉じており、唇からの圧力が前歯へと伝わるようになっています。これが日常的に開いていると、唇から前歯へと伝わる圧力が減少して、前歯が前方へと発育しやすくなってしまうのです。その結果、誘発されるのが出っ歯です。もちろん、運動をして息が切れていたり、話をしている時などは口が開いていても何ら問題はありません。

生え変わりの時期が大幅にズレると、歯列に悪影響を及ぼすことがありますので注意が必要です。

子どもの歯が生え変わる大まかな時期を知っておいて、異常が感じられたら歯科を受診しましょう。

歯並びへの影響は、生え変わりの時期だけではなく、虫歯や口腔習癖など、他にも様々な要因が絡んできます。

ですから、子どもの歯並びをキレイに保つには、生活習慣や体の発育状況など、いろいろなことに注目していく必要があります。